「認知症」と言えば、アルツハイマー型がよく知られていますが、他にも種類があり、大きく分けて4種類に分類することができます。また、認知症は予防が重要と言われていることから、今回は認知症の種類とは?最新予防対策として脳トレとPET検査についてご紹介いたします。
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目次
認知症とは?
「認知症」=「単なる物忘れ」ではなく、体験したこと自体を忘れてしまいます。例えば、食べた内容を忘れるのは認知症ではありませんが、食べたこと自体を忘れてしまうのは認知症ということになります。
認知症になりやすい性格ってあるの?
几帳面、生真面目、過度の頑張り屋、頑固、孤独の方などが認知症になりやすいといわれています。
性格がどう認知症とつながるのか原因はわかっていませんが、完璧主義→ちゃんとできないとやらない、引っ込み思案→何もしなくなってしまうという傾向があるそうです。失敗しても「まあ、いっか!」と言いながらでも、何でもやるタイプの方が認知症予防に良いようです。
私も几帳面なので、気をつけたいと思います。何歳になってもやりたいことがうまく出来なくてもどんな事に対しても、「挑戦する」という姿勢が大切ですね!
孤独の対策としては、最近近所づきあいが少なくなって、難しくなっていますが、コミュニティで支え合っていくことが重要です。
認知症に種類は4つある?
認知症全体の約9割を、大きく分けて次の4種類に分類することができ、これらは「4大認知症」と呼ばれています。では、4大認知症とはどんな病気があるのでしょうか?
アルツハイマー型認知症
◆原因
アミロイドβというタンパク質が脳に蓄積して、脳の正常な神経細胞が年単位でゆっくりと減少していく「神経変性」が原因で、脳の萎縮が進行する病気です。
この特殊なタンパク質のかたまりは加齢によって増えますが、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、体をぶつけ合うコンタクトスポーツなどによる頭部外傷がリストとなり、さらに増加するといわれています。そのため「第3の生活習慣病」といわれることもあります。
◆症状
記憶障害のために新しい情報が覚えられなくなったり、直前のこともすぐに忘れてしまいます。日時や季節の感覚が曖昧になり、電車に乗っていても目的地を忘れたり、ここがどこなのかわからなくなります。これを見当識障害といいます。
同じものを何度も買い込んだり(判断力の低下)、料理の手順がわからなくなったりします(実行機能の障害)。
さらには、言葉がスムーズに出なかったり、洋服を自分で選んできちんと着られなくなったり、慣れたところでも道に迷うようになります。
人によっては記憶の欠損をごまかすために作り話をしたりします(取り繕い反応)。
症状の進行は緩やかで、物盗られ妄想も出現したりします。進行するにつれて、徘徊なども現れます。発症から2〜8年で約半数が寝たきりとなり、平均8〜10年ほどで死に至る場合があります。
アルツハイマー型認知症の危険因子とは?
確実なのは、1.高齢者と、2.女性に多いというだけです。
平均寿命が男性よりも5歳違うということもあり、女性の方が長生きなので女性が多く、また閉経による女性ホルモンの減少で女性の方が発症しやすいといわれています。
関連性があるものとして、認知症の家族歴、ダウン症の家族歴、パーキンソン病の家族歴、高齢出産、頭部外傷、甲状腺機能低下症、うつ病の既往歴などがあります。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は現在、認知症全体の約20%を占めていますが、(報告により10〜40%とばらつきがあります)アルツハイマー型と比べて認知度が低く、治療について十分な経験のある医師も少ないのが現状です。
レビー小体型認知症なのに、アルツハイマー型認知症と間違えられている場合もあり、レビー小体型認知症に罹患している患者さんはもっと多いかもしれません。
また、女性に多く見られるアルツハイマー型認知症とは対照的に、男性に多く見られる認知症で、男性の患者数は女性の2倍といわれています。
◆原因
大脳皮質の神経細胞内に特殊なタンパク質の一種であるレビー小体が付着し、脳の特定のグループの神経細胞が減少することによって起こる病気です。
パーキンソン病とともにαーシヌクレインというタンパク質が関わっていて、レビー小体型認知症の患者さんが、パーキンソン病のような症状を合併するケースや、その逆のケースも多く見られています。
◆症状
記憶障害は初期から認められ、アルツハイマー型認知症とは異なり、記憶障害は比較的軽度で、新しいことを記憶できないというよりは、脳にすでに入っている事柄を思い出せない症状が中心になります。レビー小体型認知症はヒントを出すと思い出せることがあります。
意識が清明であるにもかかわらず、認知機能の変動があり、小動物や虫、小人、子供などの幻視は特徴的な症状で、「ないものが見える」、「影や衣服が他の物や人に見える」といった幻視が現れたり、幻視に伴った妄想を発症することもあります。また、パーキンソン症状が加わります。
便秘や急に起きた時の血圧低下などの症状も多く見られます。抑うつ傾向も見られるため、初期にはうつ病と勘違いしがちな病気です。
抗精神病薬に対しては、少量でも過敏性があり、副作用が出やすい特徴があります。
発症してから平均生存期間は10年未満といわれていますが、発症から1〜2年で急速に進行して死に至る場合もあり、個人差があります。
脳血管性認知症
◆原因
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血という脳卒中や、心停止や極度の血圧低下による脳損傷、脳炎などの原因で起こり、60歳以上の男性に多く見られます。
気づかないうちに進行していくアルツハイマー型と比べ、脳血管性認知症は、脳梗塞などの発作を機に発症しますが、実際には大きな発作よりも気がつかない程度の小さな発作の積み重ねによって発症する場合が多くあります。
脳血管障害の多くは、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病が原因で起こりますので、生活習慣病を防ぐことが予防につながります。
◆症状
脳血管性認知症は、障害を受ける機能と健全な機能が混在していることから「まだら認知症」とも呼ばれています。これは、脳のどの血管が詰まったかによって障害を受ける機能が異なるためです。
そのため一見しっかりしているように見えますが、新しいことを覚えられないということもあります。
症状の特徴としては、認知機能障害と軽度の人柄変化、運動まひ、歩行障害が見られ、抑うつ的で、感情失禁が見られます。
◆治療
脳血管性障害の再発防止が治療になります。血圧をコントロールする降圧剤や、脳梗塞を予防する抗血小板・抗凝固剤などの薬を服用することで再発を防ぎます。
前頭側頭型認知症
◆原因
前頭側頭型認知症は前頭側頭葉変性症のうちのひとつで、脳の前頭葉や側頭葉で、神経細胞が減少して脳が萎縮する病気です。
前頭側頭型認知症の代表的な疾患は「ピック病」です。
◆症状
感情の抑制がきかなくなったり、社会のルールを守れなくなるといったことが起こります。
また、初期から食行動異常、衝動性・常同行動(同じ行動や行為を目的もなく何度もくり返し続けること)などの行動異常と健忘失語(聴覚的理解は正常〜比較的良好だが、言葉が思い出せない、言葉にできない状態)・語義失語(言葉の意味の理解や物の名前などの知識が失われる状態)が認められます。
中期になると滞続言語(同じフレーズを、どんな状況でもくり返してしまう言語症状)が認められ、常同行為が目立ち、人格変化も進み、無関心・無頓着になります。末期には失外套症候群を呈します。
*失外套症候群とは・・大脳皮質全般(外套)の広範な障害によって起こる症候群で、大脳の機能が失われ、自発性の欠如が著しく、自ら話したり動いたり認識したりすることがなく、精神的な反応はほとんどなくなります。ただし意識は清明だといいます。
認知症対策「予防」の時代へ
2019年5月16日、政府が初めて認知症について数値目標を掲げました。2025年までの6年間に70代の認知症の割合を6%減、10年間で約10%削減するとし、対策の柱を予防としています。
→政府は6月3日、認知症対策の予防に関する数値目標を取りやめる方針を固めたそうです。参考値に格下げとなります。その背景には「認知症の人と家族の会」などが「数値目標は偏見を助長し、自己責任論に結び付きかねない」とし懸念を表明しました。また、与党内からは「予防に関する科学的根拠が不十分だ」「誤解を招く」といった批判が出ていました。予防自体は対策の柱として維持されます。
その上で新たに予防に関する定義を設け、「『認知症にかからない』という意味ではなく、『認知症になるのを遅らせる』『認知症になっても進行を穏やかにする』という意味だ」とし、認知症の人や家族に配慮した形となりました。
予防対策するのは必要だと思いますが、数値目標を設定するというのはいかがなものかと思います。一体どういう基準で、数値目標を設定したのでしょうか。しっかり予防対策していても、認知症になってしまうこともあります。
何故予防を対策の柱にしたのか。それは、認知症治療薬の効果があまり上がっていないということがあります。治療薬を柱とする対策が頓挫したために、予防を柱にしたといわれています。
治療薬の効果が上がっていない以上は、予防が大切ということに変わりはありません。
認知症にならないための4カ条
1. 生活習慣病を防ぐ!
高血圧・糖尿病は認知症になるリスクが2〜3倍に上がります。きちんと治療しましょう。まずは、生活習慣病にならないことが重要です。
2. 頭や体を動かす!
楽しく毎日続けることが大切です。一所懸命やりすぎず、無理せずできることを見つけることが鍵になります。まずは、週1回以上のウォーキングやヨガなどの有酸素運動をしてみましょう。「継続は力なり」です。
3. 楽しんで続けられる趣味を探す!
1つだけの趣味では万が一出来なくなることもあるので、いくつもの趣味を見つけることが大切です。
4. ドキドキワクワク感を忘れるべからず!
認知症対策「脳トレ」ご紹介!
話しながら、歩くことってありますよね。その時に歩くスピードが落ちたり、止まってしまったりしたことはありませんか?もし、歩くスピードが落ちたり、止まってしまう方がいらっしゃいましたら、それは認知症になるリスクがあるかもしれません。
歩きながら体を動かすことに加え、頭を使う・脳を鍛えることは認知機能向上に良いとされています。
今回ご紹介する、コグニケア(Cogni CARE)とは、認知症予防が必要とされる60歳代、70歳代に、運動や認知機能トレーニングなど「多面的に予防にいいもの」に、 取り組むプログラムの総称です。神戸大学の研究者たちが、最先端の研究を基盤に考案しました。
具体的にコグニケアとは、有酸素運動をしながら九九やしりとりをなどをして脳を鍛えるというもので、海外研究ではこういったプログラムで認知症予防効果が得られたとの報告があります。
2つの事を同時にするということは結構頭を使いますから、認知症の予防には効果がありそうですね!
コグニケアに興味がある方・・・神戸大学・コグニケアHPこちらをご参照ください。
認知症予防のその先へ「PET検査」とは?
近畿大学病院・高度先端総合医療センターでは、関西でも数少ない、認知症の早期発見を目的の検診が行われています。その名も「脳PETもの忘れドック」です。
PET検査とは・・・薬剤を体内に注射して、放出される放射線を特殊なカメラで捉えて画像化するもので、癌の診断には欠かせません。
脳PET検査で分かるのは・・・「糖代謝レベル」=脳がどれだけ活動しているかがわかるんです。
PETでブドウ糖代謝を見ると、画像の赤いところは正常、黄色から黄緑になっているところは代謝が低下していることがわかります。
近大病院では13万円(保険適用外)で検査を受けることが出来ます。2018年9月に検診がスタートしてから、家族から検診を勧められる方もいて、受診者数が増えています。
ご興味のある方はこちらをご参照ください。
さらに早期発見に繋がる可能性がある研究とは?
アルツハイマー型認知症の原因・・・前述したとおり「アミロイドβ」というタンパク質が脳に蓄積することが原因と考えられています。
PETを使って「アミロイドβ」を撮影できるようにする研究が進んでいるとのこと。アミロイドβは蓄積すると、”脳のシミに”になっていきます。アミロイドβの蓄積は糖代謝低下より数年から十数年早いとされているため、アミロイドPETがより早い段階での予防や治療に役立つのではないかと期待されています。
認知症のプロセスは、一番最初にアミロイドβがたまる→かなり遅れてから糖代謝が低下する→脳が萎縮する→認知症の症状が出るとされています。
診断される15年前くらいからアミロイドβがたまり始めるといわれていて、現段階では、アミロイドβを取り除くという治療はないので予防が大切になってくるわけです。
今後期待出来る研究ですね!!
他にも・・・アルツハイマー型認知症の患者の脳から歯周病の病原菌を確認していることから、歯周病予防が、認知症予防になるのではないかといわれていて、人間での実験はまだですが、マウスでの実験でマウスの口に歯周病の病原菌を植え付けると4週間後にアミロイドβが溜まるという研究がされています。
歯周病は万病のもとです。認知症だけでなく、狭心症や心筋梗塞、感染性心内膜炎などの発症のリスクにもつながってきますから、歯は本当に大切です!!
まとめ
認知症と言っても、様々な認知症があることがわかったと思います。現段階で認知症に効く特効薬はありません。根本的に認知症の進行を止める働きはなく、飲んでいても最終的には認知症は進行します。また記憶障害や行動障害を劇的に改善させるほどの効果も期待できません。
しかし、脳で生き残っている神経細胞を活性化させ、覚えたり考えたりする働きをある程度保つ可能性があります。また、日常生活に活気が出たり、イライラや不安を少なくすることによって生活の質を上げる効果も期待できます。
薬剤ですので、少なからず副作用はあります。薬が合わないと、極度に元気がなくなってしまったり、反対にイライラして攻撃的になったりします。合う薬が見つかるまで、根気が必要になります。担当の先生としっかり相談してみてください。
特効薬がない限り、やはり予防が重要の鍵になってきますね!!
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