病院の領収書の点数の意味は?復活すると話題の妊婦加算を例に解説!

医療

「妊婦加算」が復活するという情報から一転、再開を断念し、廃止するという情報が入りました!

安易に「妊婦加算」を作ったがばっかりに、お粗末な結果になってしまいましたね^^;

「妊婦加算」以外にも病院の費用ってみなさんが知らないだけで良くわからない加算がたくさんあるんです。

今回は病院の領収書に書いてある点数について「妊婦加算」を例に解説していきたいと思います。

目次

スポンサーリンク

病院の領収書に書いてある点数の意味は?

病院でもらう領収書に点数が書いてありますよね。この点数は、皆さんが受ける診察や検査などの医療行為の値段が細かく決められていて、それを点数化したものです。

この点数に10円をかけると医療費となるわけです。

医療費は、医療機関や薬局での診察・治療・処方などの医療サービスを受けたときにかかる費用です。一方で、医療機関が、提供したサービスの対価として受け取るのが診療報酬です。

この診療報酬を調べる本があるのですが、とっても太くて、厚さ5㎝ほどもあるんです。しかも字も小さくて・・・。書いてある内容はわかりにくくて、私が医療事務をしている時にはいつもにらめっこしていました。

話しは少し脱線しましたが・・・。

日本は国民皆保険ですので、皆さんが支払う金額は、医療費のうちの3割(1割や2割の方もいます)を医療機関の窓口で支払うシステムになっています。

では残りの7割はどこがお金を払ってくれるかというと、「保険者」(ほけんじゃと呼びます)(皆さんが加入している国民健康保険・全国健康保険協会・健康保険組合・共済組合など)から支払われています。皆さんの持っている保険証の一番下に保険者は書かれているのです。

もし、国民皆保険制度がなければ、全額自己負担となってしまうということです。

入院して手術なんかしたら、どんでもない金額になります。私が心臓血管外科の病棟で医療事務をしていた時は、ひつつ診療報酬の点数が50万点以上になったりすることもありました。

50万点ということは・・・

500,000点×10円=5,000,000円(500万円)にもなるんです!

そりゃ、日本の医療費が膨れ上がって財政を圧迫するはずです。

皆さんが500万円を支払うわけではないのでご安心を!!皆さんが支払う医療費は1割から3割です。

1割から3割でも50万点の診療を受ければ、支払う金額は50万〜150万円になってしまうのかというとそうではありません。

支払う金額が多くなると減額制度もあります。ただし、個室ベッド代などの自費は対象外にはなりますが。

減額制度年齢や、収入によって変わってきますので、医療費が高額になりそうだったら、医療機関の窓口で相談してください。この減額制度、コロコロ変わりますので、こちらに書くのはやめておきます・・・。

病院の領収書の見方を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

この診療に対する点数で特に話題になっているのが、「妊婦加算」です。加算って本当にいっぱいあるんですけど、なぜこんなに話題になっているのか、医療事務をしていた私には?(はてな)でしたが、患者さんの立場に立ってみるとなるほど!と思いました。

では、皆さんが気になる「妊婦加算」について詳しくみていこうと思います。

「妊婦加算」とは?

妊婦さんが病院で受診すると、診察料に上乗せされるという加算です。(*歯科以外)

  • 妊婦の負担額 初診:約230円 再診:約110円(3割負担の場合)
  • 加算の理由 妊婦は「特別な配慮」が必要だから。

「特別な配慮」とは・・・

  1. 医薬品によっては胎児に悪影響があり、妊婦さんが使えない薬がある。
  2. 頻度の高い合併症の可能性がある。(尿路感染症・糖尿病・高血圧・貧血など)
例えば、妊婦さんが花粉症で耳鼻科を受診した場合、「妊娠中でも飲める薬を出しておきます」、これが特別な配慮になるということです。妊娠中には飲めない薬があるため、細心の注意が必要となるわけです。

しかし、コンタクトレンズの処方や、ツイッターの内容のように診察後に気がついて加算されるということもありました。これでは、特別な配慮をされて診察をしたことにはなりませんよね。

なぜ、どう考えても特別な配慮をされていないのに、加算されるのか?

それは、「どの診療科でも加算ができる」ことになっているからです。なんだかおかしい加算でも、加算することによって病院の収入になるのですから、加算しますよね。

開業医や病院側も経営が厳しい時代になっていて、「妊婦加算」は医者にとってみれば原価がかからない、おいしい加算というわけです。

「妊婦加算」ってどうやって出来たの?

妊婦加算の導入を求めたのは、産婦人科医です。理由としては、例えば妊娠中に風邪を引いて内科を受診しても、妊婦は専門外だからという理由で産婦人科に回され、結局産婦人科医が診療することになり、産婦人科医の負担が増えてしまうからです。

産婦人科医師はなり手が少なく、人手不足となっています。

その理由としては、時間外・深夜にもお産があって忙しくなったり、産婦人科医師が訴訟に巻き込まれるリスクは、内科やその他の科に比べて高くなっているのが現状で、なり手が少なくなっています。

特に、近年晩婚化の影響もあり、高齢出産も増え、ハイリスクな妊婦さんが多くなっています。

本来産婦人科医師が診ないといけない患者さんを診れなくなる恐れがあるために、風邪くらいは産婦人科以外でも診てもらいたいという思いがあるようです。

医師法19条1項:診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければこれを拒んではならない。(応召義務)という規定があります。

この応召義務は難しいのですが、医師の専門分野でない患者さんがきた場合は断っても良いようなそれでも断ったらダメなようなグレーゾーンになっていて、産婦人科以外の医師は、リスクを恐れて妊婦さんの診療を敬遠し、たらい回し状態になっている現状があるようなんですが、それを打開するために作られたのが「妊婦加算」です。

こんな経緯で、産婦人科医の声を受けて「妊婦加算」が導入されたわけです。

「妊婦加算」誰が決めるの?

この「妊婦加算」のような診療報酬は誰が決めるのかというと、「厚労大臣の諮問機関 中央社会保険医療協議会(中医協)」です。どんな組織かというと、健保組合や医師会、薬剤師会などで構成され、2年に一度診療報酬を改定するところです。

「妊婦加算」は2017年10月に中医協で議題に上がりましたが、ほとんど議論せずに、2018年4月導入されました。その後の厚労省の周知も後手になったために、今回の凍結に繋がったと考えられます。

「妊婦加算」、少子化が問題になっているのに、妊婦さんに負担させるのはいかがなものかということです。

医療従事者の声・・・

  • 医療加算についての理解が足りない、妊婦を診察するのは大変で、そこが評価されて加算が付いた。実質的に診療報酬は下がっている。
  • 好きで妊婦加算を取っている訳ではない。医療加算は何百とあるので一つ言い始めると全てがダメになってしまう。

医療従事者からしたら、この意見は納得です。妊娠って病気ではないですけど、誰でも異常なく出産できるかといえば、そうではありません。命がけなんです。

私は何人もの悲しい思いをしている妊婦さんや家族さんをみてきました。本当に出産はリスクが伴います。ですから、医療機関としては評価してほしいと思うのは当然のことだと思います。

また医療加算って本当にたくさんあって、私でも何この加算?と意味がわからない加算もあります。

だから「妊婦加算」だけ凍結するというのはいかがなものかとも思います。中医協もきちんと議論せずに、「妊婦加算」を作ってしまったというのが問題なんだと思います。

こんな安易に導入を決めてしまった「妊婦加算」ですので、ある妊婦さんのツイッターのつぶやきがきっかけとなって結局、2019年1月に凍結になったのですが・・・。

「妊婦加算」が復活する?

この問題となった「妊婦加算」が復活すると言われていましたが、2019年12月20日に厚生労働省は、「妊婦加算」の再開を断念し、廃止が決定しました。

復活から一転、再開を断念・・・経緯がだんだんわからなくなってきたので、ここでまとめて説明していきたいと思います。

まず、「妊婦加算」がどうして凍結になったのか。

「妊婦加算」が話題になったきっかけは、ある妊婦のつぶやきでした。

2018年9月、ツイッターに投稿された妊婦のコメント

この前皮膚科に行ったらお会計呼ばれて、「あれ、妊娠中ですか?ならお会計変わります」と言われて会計高くなった妊婦加算だとさ。

このツイッターが拡散されて大炎上となり、先ほども説明しましたが、2018年4月に導入した「妊婦加算」2019年1月、異例の凍結となりました。大炎上の理由は、大部分の妊婦さんが「加算」を知らなかったことです。

こんなすったもんだあった「妊婦加算」ですが、名称変更や患者さんの自己負担の在り方を見直した上で再開することを検討していましたが、結局世論の理解を得られないと判断し、再開を断念という結果になったようです。

今後は、代替案として、妊婦さんに限らず、患者さんの同意を得た上で、医療機関同士が治療内容や検査結果について情報共有した場合に加算する仕組みを新設することが決定となりました。

来年(2020年)2月をめどに対象となるケースや加算額を詰め、来年(2020年)4月から実施されます。

今度こそはきちんと議論を重ねて、妊婦さんに配慮した医療の仕組みを作っていただき、妊婦さんに理不尽な負担にならないようにして欲しいものです。


産婦人科でも設置の妊婦さん用腰痛軽減補助マットを西川リビングが
産学共同で商品開発!

妊婦さんの医療費を補助する自治体もある!

妊婦さんの医療費を補助する制度があります。それは、妊産婦医療費助成制度といいます。医療費の保険診療の自己負担分を自治体が公費で助成してくれる制度です。

栃木県の場合・・・

  • 1973年制度開始。乳幼児への助成制度に合わせ、子どもの健康を守るには母親の健康も守るべきだということでスタート。
  • 対象者:全妊産婦・所得制限なし
  • 給付対象:保険適用の全疾病
  • 自己負担:月500円(レセプト代として)
  • 給付方式:口座振込

妊産婦医療費助成制度がしっかりあったためか、「妊婦加算」導入後も全く問題にならなかったようです。

栃木県の場合は月に500円払うだけですから、今回の「妊婦加算」も気にならないはずです。

自治体も財政難と言われていますが、栃木県のように補助してくれれば、お子さんを考えている方は、移住したくなりますね。

まとめ

詳しく妊婦加算を書いてきましたが、加算を導入する・しないにしても、きちんと議論し納得できるものにしてもらいたいと思います。

全部の診療科に加算するのではなく、妊婦さんの身体をしっかり診た医療機関だけに加算するといったような適切な対応をしてほしいものです。

医療費は患者さんの自己負担だけではなく、税金も投入されているのですから、安易な議論だけはやめていただきたいと切に願っております。

「異所性脂肪」についての記事はこちら↓↓↓

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました